開運とご利益の神仏事典
第1回 観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)
はじめに
お客様からのご相談事を伺う中で、お寺や神社参りで授かる御利益、あるいは特定の神様や仏様の功徳についてお訊ねいただくことがよくあります。
「神社にお参りすると良いことが起きるってスピリチュアル系の本に書いてあったのですが、それは本当?」 「恋愛成就や縁結びに絶大な御利益があると聞いて、遠方にある大きな神社へわざわざ泊まりがけで出掛けたのですが・・・・・神主さん直々のご祈祷まで受けたのに、全然効き目がありません!」 「守り本尊のアクセサリーを持つと災いが防げるらしいですね。私を守ってくれているのはどんな仏様ですか?」
等々、お訊ねの内容は様々ですが、概して御利益や功徳の内容がいまいち分からないという質問が見受けられます。
比較的大きな神社仏閣では由緒書きの看板という形で、創建からの歴史的な経緯やお祀 (まつ) りされている御本尊の由来などを知ることができます。そこには当の御神仏が発揮する功徳や御利益などについても書かれ、多くの参拝客を呼ぶためにそれを盛んに喧伝する寺社もあるほどです。そうした寺社では従来伝えられる御利益の他に独自の裁量で新たな項目を付加することもあって、参拝する側としては時に混乱を来すこともあります。
また、そうかと思えば参拝作法について、「お寺や神社で祈願をするのは邪道。本来は仏様やご祭神にはご挨拶だけをするべき」など、手厳しい内容が書かれている解説書などもあるわけです。一体、どの説を信じれば良いのかと迷っている方も多いのではないでしょうか。そうした疑問に応える形で、新たに企画させていただいたのが本コーナーとなります。神秘現象に関して豊富な鑑定事例を有する強みを活かし、さらに在籍する先生方の監修協力も得て、皆様から寄せられた御利益と功徳の体験談をこのページで随時、紹介していきたいと考えています。
今回はそのスタートに当たり、御仏と言えば誰でもまず初めに思い浮かべるほど有名な観音様の霊験について取り上げてみました。
観世音菩薩のプロフィール
別名、観自在菩薩、あるいは略して観音菩薩。梵名はアヴァローキテーシュヴァラ。日本国内の仏教信仰において古来、最も広く親しまれてきた菩薩様です。呼称の由来は、「俗界(世)の人々の救いを求める声(音)を聞き(観)、直ちに救いの手を差し伸べる」という意味から来ており、すなわちそこから「観、世、音」と呼ばれます。
その基本形である聖観音(しょうかんのん)の他、観音像にはいくつものバリエーション(変化形)が存在し、代表的な形姿には、十一面観音(じゅういちめんかんのん)、馬頭観音(ばとうかんのん)、不空羂索観音(ふくうけんじゃくかんのん)、千手観音(せんじゅかんのん)、准胝観音(じゅんていかんのん)などがあります。
観世音菩薩の御利益と功徳
上に挙げた観音像ごとにそれぞれ異なる御利益が伝えられていますが、代表格の聖観音を例に取ると、現世利益の全般に渡って大きな功徳を施し、とくに人生上で遭遇する様々な苦難苦痛を取り除いて、極楽往生に導いてくださる菩薩様として知られています。さらに細目を挙げれば、厄除け、魔除け、病気平癒、開運、金運、健康長寿、心願成就に良縁結縁など多岐に渡り、これを本尊とする全国無数のお寺や祠でも、多種多様な御利益が謳われています。まさにオールマイティの仏様です。
体験談の紹介
御利益体験 その1 結縁、恋愛成就
「実家の菩提寺で観音様を拝んだ直後、とても不思議なことが起きました!」
【高瀬皆美さん(仮名) 29歳 新潟県在住】
観音様の御利益って本当にありますよ。私も今から3年前に、偶然とは思えない体験をしました。
当時は実家住まいで勤め先には車で通っていたのですが、その行き帰りの道筋にあるガソリンスタンドの従業員を好きになってしまって、どんな形で好意を伝えれば良いのかと密かに思い悩んでいた時期がありました。
そんなある休日の昼下がり、同居の祖母が菩提寺へ行く用事があると言って、私が運転する車で送ってあげたのですが、成り行きでご住職の話を聞くことになってそのまま本堂へ通されました。
そこにはすでに何人か、祖母と同年代のお年寄りの姿がありました。みんな同じ檀家の人々だったのですが、私が端に座ったとたん、そのうちの1人から経本を渡されて、一緒にお経を読まされる羽目に。
そこのお寺の御本尊は観音菩薩でした。仏像を間近に見るという経験は高校の修学旅行以来ということもあって、初めはただ好奇心で眺めていたところ、そのうちに「試しに願を掛けてみよう」と思いつきました。「例のカレとお近づきになれますように」と、こっそり観音様にお願いしたんです。
それが済むと今度は家のお墓参りにも同行したのですが、その時に奇跡が起きました。寺院の敷地と隣接する墓苑に入ったら、何とそこにはあのスタンドでよく見るカレの姿が!
あちらは墓参を終えて帰るところでした。カレは自分のお祖父さんと思しき高齢男性の手を引いていたのですが、祖母の方から声を掛けるとすぐに立ち止まって会釈を返してきました。そのお祖父さんと私の祖母とは旧知の間柄だったんです。
肝腎のカレは私の顔を覚えていてくれて、「あ、いつもウチで入れてくれるお客さん!」となって・・・・・これをきっかけに私たち、お付き合いするようになりました。そして今では夫婦の仲です。この話、今でも親戚中の語り草になっていて、まだ結婚していない従姉妹たちは菩提寺の観音参りに勤しんでいます(笑)。
御利益体験 その2 除災、盗難除け
「我が家の玄関に飛び込んできた不審者を一瞬で追い払ってくれた観音像」
【篠原志緒里さん(仮名) 46歳 静岡県在住】
町内で空き巣被害が頻発していた頃、我が家にもそれらしき不審者が忍び込もうとしたことがありました。ちょうど真夏の昼下がりで、玄関戸に隙間を作って外の風を通していたんですが、まさか自分の家が標的になるなんて思いもしませんから、お昼の家事を早めに済ませた後、居間で暢気に昼寝をしていました。
折った座布団を枕にウトウトしていたら、いきなり廊下の方でゴトンと音がして、玄関口の三和土(たたき)の辺りに人の気配を感じました。主人は出勤しているし義母も遠出の最中だし、大学生の息子もまだ帰ってくる時間ではないし・・・・・それで咄嗟に身構えながら、引き戸を少しだけ開けて玄関を窺うと、黒いポロシャツを着た大柄な男が慎重に靴を脱いでいる様子が見えました。
人にも拠るのでしょうけれど、ああいう時って声が出ないものなんですね。少なくても私はそうでした。庭から逃げる算段をしながら、恐怖と緊張に身を震わせていたのですが次の瞬間、またいきなり大きな音が響き渡って、驚いたその男は脱兎のごとく逃げ出しました。何が起きたのかと訝しみながら恐る恐る見てみると、廊下の壁に飾ってあった額装の絵がフックごと外れて落ちていました。
それからはもう大騒ぎでした。警察を呼んで状況を説明し、ようやく落ち着いた頃に家族が帰ってきて、半泣きになりながら事情を話したら、なぜだか義母が何度も頷いて、そのまま玄関へ引っ張って行かれたんです。
「ほら、きっとこれが守ってくれたんだよ」
言いながら義母は下駄箱の上の棚奥から白い絹地の袋を取り出してきたのですが、中には小さな観音様の像が入れられていました。
「お義母さん、これどうしたの?」
「古い知り合いからの預かり物だよ。あんたに言われて思い出したんだ」
元々は祖母のお友達が集めていた骨董のひとつで、その人が亡くなった時に形見分けとしてもらった品でした。しかし物が物だけに扱い方に迷い、持ち帰った日に棚にしまったまま忘れていたそうです。
「これからはちゃんとご供養するよ。これがあんたを守ってくれたんだからね」
以来、義母はその像を仏壇に安置し、義父の位牌と共に大切に拝むようになりました。
壁から落ちてしまった額は翌日、夫が直したのですが、フックを取り付けながら盛んに首を傾げていました。
「おかしいな。コレ、釘を打ち込んでしっかり固定するタイプだから、少しくらいの風が吹いたからって、そう簡単に外れるわけがないんだが・・・・・」
その言葉を聞くうちに、「観音様の助け」だと私も確信しました。その出来事がきっかけで見えない世界に興味が湧いて、慈念さんにもお電話させていただくようになったんです。
御利益体験 その3 金運、病気平癒、運気向上
「ある晩、金色に輝く観音堂の夢を見ました。するとそれを境に、どん底の人生が劇変したんです!」
【渡真利美雪さん(仮名) 49歳 石川県在住】
30代の頃、家族経営で支えていた父の会社が破産し、一時は困窮のどん底をさ迷いました。債権者の追跡を逃れるため、父、母、私と弟の4人は散り散りになって遠い場所に住み、しばらくその日暮らしのようなことを続けていたのですが、過酷なアルバイトの掛け持ちの末に健康を害してしまい、ついにアパートの家賃すら払えなくなりました。
電気ガス水道が全部止められた真っ暗な部屋で、布団にくるまりながら高熱にうなされていると、やがて幻覚のような光景が目の前に広がっていきました。それは金色に光り輝く寺院の仏堂でした。最奥の伽藍には観音様の立像が置かれ、その神々しいお顔は優しく微笑んでいるように見えました──。
やがて意識を失って再び目覚めると、ベッドの傍らに私を看病してくれている弟の姿がありました。どうしてここにいるのかと訊ねたら、「姉ちゃん、借金を返す目処がついたからもう心配しなくて良いよ」と明るい笑顔で言われたのです。
母方の親戚の1人が東北地方でお寺の住職をしており、その人が父母の生活の面倒を見てくれていることを弟の口から初めて知らされました。おまけに当面、必要なお金を無利子で融通してくれるとのことで、おかげで家族が再び一緒に住めるようになったのです。
その後、弟と協力して飲食関連の商売を始め、40代を迎える頃にようやく人並みの生活を取り戻しました。それまで諦めていた結婚の夢も何とか叶えることができ、現在は夫とともに北陸で暮らしているのですが、自宅には大きな仏壇を置いてそこに聖観音の像をお祭りしています。
母方の血筋というのは代々、観音様を篤く信仰する家柄であったそうです。私たちを助けてくれたご住職のお寺も御本尊は聖観音でした。私はその御仏の力によって生かされたのだと、今でも堅く信じています。
【聖観音真言】
「おん あろりきや そわか」
※危急のことが起きた際は、観音様のお守りを手にこの真言を唱えてみてください。ただそれだけで心が落ち着き、身に降りかかろうとする災厄から即座に免れることができます。
【霊能者による考察コメント】
霊や神仏の世界と関わる仕事を長く続けていると、神社や寺院が謳う御利益と実際のそれとの相違に気づくことがあります。とくに観音様の場合は、「災厄や危難から守ってくれる力が絶大」というのが私個人の実感です。もちろん開運の福も授けてはくださるのですが、それよりもなお除災や厄除けにおいて功徳の力が際立っているのです。
ですから電話相談の最中も、災難めいたトラブルで悩んでいるお客様には「とりあえず観音様のお守りを肌身離さず持ち歩いてください」と申し上げるようにしています。時にはただそれだけで、悩み事自体が解決してしまうケースもあるほどです。 お寺と名が付く場所に赴けば大抵はそのお姿を拝見できる仏様ですから、そのお力をお借りしたいと願っている方も比較的容易にお参りができます。また折に触れてその真言を唱えたり、自己修養を兼ねての観音経の写経などもぜひおすすめします。